職業柄、常に新しい情報に触れ続けなければならない編集者にとって、自宅が汚部屋化してしまうことは、ある種の見逃せない職業病のような側面を持っています。今回ご紹介する事例は、都内の出版社に勤務する四十代男性、Aさんの再生の記録です。彼の部屋は、かつては洗練された書斎のような空間でしたが、仕事で持ち帰ったゲラ刷り、献本された新刊、そしてリサーチのために買い込んだ膨大な雑誌によって、数年のうちに足の踏み場もない汚部屋へと変貌してしまいました。Aさんは仕事においては非常に有能でしたが、自宅に帰ると極度の疲労から片付けの手が止まり、山積みの資料を「いつか仕事で使うから」という免罪符のもとに放置し続けました。本による汚部屋は、食品ゴミによるそれとは違い、一見すると不潔感がないように錯覚させますが、その実態は紙の隙間に蓄積された膨大な埃と、日光を遮られたことによる湿気の溜まり場でした。彼が再生を決意したのは、ある日、自分が担当した大切な企画書がゴミの山の中に紛れ込み、どれだけ探しても見つからなかったという絶望的な経験をしたからでした。掃除の専門家を呼び、彼が最初に行ったのは、仕事の資料を「現在進行形」と「過去の遺物」に冷酷に分けることでした。十年前の雑誌特集、すでに退職した著者のゲラ、これらは今の彼にとっての武器ではなく、足を引っ張る重りに過ぎなかったのです。作業には三日間を要し、運び出された紙類の総重量は一トンを超えました。部屋から紙の山が消えたとき、Aさんが最初に感じたのは、驚くほど澄んだ空気と、自分がこれまでどれほど重苦しい圧迫感の中で生きてきたかという事実でした。再生のポイントは、部屋を綺麗にした後、二度と汚部屋に戻らないための仕組み作りでした。彼は全ての雑誌をデジタルサブスクリプションに切り替え、紙の資料は受け取ったその日にスキャンして破棄するという徹底したペーパーレス化を断行しました。汚部屋だった頃の彼は、過去の功績や知識の蓄積に執着していましたが、空間を取り戻した後の彼は、新しい情報を軽やかに取り入れ、創造的な仕事に打ち込めるようになりました。部屋の状態は、住人の思考の鏡です。Aさんの再生記録は、どれほど深刻な情報の山に埋もれていても、決断一つで人生をリセットできるという希望を私たちに示してくれています。
書類と雑誌の山に埋もれた編集者の再生記録