近年、メディアで取り上げられる機会が増えた「ゴミ屋敷」ですが、その問題は社会の片隅でひっそりと進行しているだけでなく、実際にその「件数」が増加傾向にあるという深刻な現状があります。各自治体への相談件数や、片付け業者の依頼件数からも、ゴミ屋敷問題が現代社会において無視できない存在となっていることが浮き彫りになっています。この問題の増加には、高齢化、単身世帯の増加、精神的な健康問題、そして地域社会の希薄化といった、複数の複雑な背景が絡み合っています。まず、最も大きな要因の一つが「高齢化」です。高齢になると、身体的な衰えから片付け作業が困難になったり、認知症の進行によりゴミとそうでないものの区別がつかなくなったりするケースが増加します。また、身寄りがなく孤立している高齢者も多く、周囲からの支援が得られにくい状況も、ゴミ屋敷化を加速させる要因となります。彼らが自分で問題を解決しようにも、体力や判断力の低下により、それが叶わないことが多いのです。次に、「単身世帯の増加」もゴミ屋敷件数増加の背景にあります。一人暮らしの人は、家族の目がなく、片付けに対するプレッシャーを感じにくい傾向があります。また、仕事のストレスや人間関係の悩みから、精神的に不安定になりやすく、それが片付けへの意欲の低下や、物を溜め込む行為に繋がることもあります。特に、若年層の単身者においても、ゴミ屋敷化が問題となるケースが増えており、孤独や孤立が現代社会全体に広がっていることを示唆しています。さらに、「精神的な健康問題」も重要な要因です。うつ病や発達障害、強迫性障害の一種である溜め込み症など、精神疾患を抱える人々は、物を捨てられない、片付けられないといった行動をとりやすい傾向にあります。彼らは、片付けたいという気持ちがありながらも、病状のためにそれができないという葛藤を抱えており、ゴミ屋敷はその心の状態を映し出す鏡とも言えるでしょう。そして、「地域社会の希薄化」も看過できません。かつては、近所付き合いの中で異変に気づき、声をかけ合うといった見守りの機能が地域社会にはありました。しかし、現代ではそれが失われつつあり、ゴミ屋敷問題が深刻化するまで周囲が気づかない、あるいは気づいてもどうしていいか分からないという状況が生じています。