行政代執行によって山積みのゴミが取り除かれた後、そこにはガランとした静寂が残ります。しかし、多くの専門家が指摘するように、ゴミを撤去しただけでは問題の半分も解決できていません。むしろ、ここからが本当の支援の正念場と言うことができます。長年ゴミに囲まれて暮らしてきた住人にとって、突然その環境が消え去ることは、心理的な「剥き出し」の状態にされることを意味します。これまで自分を守っていた物がなくなった喪失感から、住人が激しいうつ状態に陥ったり、自暴自棄になったりするケースは少なくありません。そのため、執行直後から福祉担当者による集中的な見守りと、精神科医やカウンセラーによる心のケアが必要不可欠です。また、物理的な住環境の再構築も急務です。代執行はゴミを運び出すだけであり、腐敗した床や壁の修復までは行いません。住人がそのままその家で暮らすには、ハウスクリーニングや修繕が必要となりますが、本人の経済力がない場合、ここで再び行政の支援が必要となります。生活保護の申請や、より適切な福祉施設への入所を促すことも重要な選択肢です。そして、最大の課題は「再発防止」です。溜め込み症や認知症などの根本的な原因が解決されない限り、住人は再びゴミを拾い集め始めます。これを防ぐためには、週に数回の訪問介護やボランティアによる声かけ、さらには地域住民による緩やかな見守り体制を構築し、住人を孤独にさせないことが重要です。ゴミ出しのルールを改めて一緒に学び、少量ずつのゴミ出しを習慣化させるリハビリテーションも行われます。行政執行を単なる「ゴミの除去」で終わらせず、その後の人生をどう構築していくか。執行後のアフターフォローこそが、投入された税金の価値を最大限に高め、地域全体の平穏を永続的なものにするための鍵となります。ゴミのない部屋に再び人間らしい笑顔が戻ったとき、初めて行政執行はその真の目的を達成したと言えるのです。
ゴミ屋敷執行後の生活再建と再発防止の支援